先日「江戸の凸凹」という名の浮世絵の展覧があったので行ってみました。(東京・原宿:太田記念美術館。2019年6月開催)
江戸・東京には海を埋め立てた低い街と台地とが入り組んで、その境目に坂が多いのです。
現代は、大小高低さまざまな建物が入り乱れて土地本来の姿が見えにくいし、車で動けば坂道の傾斜すら意識することがありません。ただ、浮世絵には、その土地の本来の様子が多少の誇張はありながらもきちんと描き出されているのです。
この凸凹をあえて歩いてみる地形散歩が流行りなこともあって多くの観覧者が来ていました。
浮世絵にも描かれる(掲げたのは、廣重の江都名所から)「芝 あたご山」。
今は下にトンネルまでくりぬかれていますが、江戸時代から変わらぬ有名な出世の石段を登れば、頂上の愛宕神社の境内は標高25m。
武蔵野から続く台地が海に接するところだから眺めはすこぶる良く、白帆を浮かべる海の向こうに安房・上総まで見え、お江戸の名所として賑わいました。下の地図は、こちらのブログから拝借しています。こちらもなかなか面白い。
いま、近くの虎ノ門ヒルズは地上52階、そこは標高250m。ここまで登れば同じような眺めが楽しめます。現代は江戸に比べ、実に10倍の高さを確保せねばならなくなったわけですね。
愛宕山と、その北側にそびえる虎の門ヒルズ
上は、江戸末期の愛宕山からの眺め(フェリーチェ・ベアトが1864年ころ撮影した写真をつなぎあわせて着色加工)。ちなみに「東京都写真美術館」のオリジナル手ぬぐいにもなっています(笑)https://topmuseum.jp/contents/new_info/index-1648.html
中は、明治中期に撮られたもの。中央に教会があったり、煉瓦の建物が散見されるようになりました(右の大きいのは慈恵医大病院の前身)。
下は現代。虎の門ヒルズより
昔も今も高いところからの眺望は私たちを魅了します。山登り程でなくても眺望というのは神様の「視座」を重ね合わせるからなのでしょうか。