2019年10月12日に関東地方を通過した台風19号は、あまりの勢力範囲の大きさに、長野や福島、岩手など広範囲に多大な影響を及ぼしました。その前の台風15号も千葉県を中心に長期間の停電を引き起こしました。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。
いよいよ環境問題を長年軽視してきたツケが回ってきたのかもしれませんね。
このブログの「暮らしと建てもの」という切り口からは、再開発で人気が高まっている町、武蔵小杉の冠水の惨状と、同地のタワーマンションのひとつが停電という衝撃的な状況に少し分け入ってみたいと思います。
この間の報道などを見ると、多摩川の水が堤防を越えて溢れてきたのではなく、川から下水道に逆流して街に水が噴出したというのが原因のようです。数日後に訪れてみた時も、道路のそこかしこに泥の堆積がまだたくさん残っていました。
行政が提供した「浸水継続時間」の図を目にして、次の図(「今昔マップon the web」による武蔵小杉駅周辺)と瓜二つだと思ってしまいました。
左側の白黒の地図は約100年前、明治30年前後のもの。多摩川が蛇行していた跡がUの字型にくっきりと残っています。その場所が今(右の地図)では、工場や駅になっていることが見て取れます。「浸水継続時間」の図は、まさにこの昔の多摩川をなぞっていると思えませんか?
多摩川の「蛇行」を制御し、川底だった土地を埋め立てたけれども住宅はなかなか建てにくく、工場の敷地にする。それから何十年もたって海外生産に切り替わって、工場跡地が再開発され、タワーマンションが建ち並ぶ。そういう「歴史」が今回の遠因。まさに元の川筋で浸水が起った、ということ。
また、住宅地として年月を重ねてきた土地ではないため、下水道などのインフラ整備に力不足があったのかもしれません(これはあくまで推測ですが)。
最近は、WEBを通じて、浸水リスクを図にしたものが簡単に手に入るようになってきました。「ハザードマップポータルサイト」https://disaportal.gsi.go.jp/
公開主体である行政当局によって表現レベルは異なりますが、例えば10mメッシュで、浸水深を表すものもあります。
地球規模で環境対策を先送りにしているうちに「異常気象が異常でなくなる日」が近づいてきた、と多くの人が気付いた災害となったようです。
自分が住んでいる場所に、あるいはこれから住もうという土地に、水害、土砂崩れなどどのようなリスクが潜んでいるか、調べておくというのも必要かと思います。
たいせつな事は、そのようなリスクを様々な知恵や行動、助け合いで乗りきることなのでしょうから。