ほぼ一年ぶりの投稿になるのは目をつむっていただければと思いますが・・・同じ葛飾柴又から話を再開しましょう。
この記事の一つ前で、賑わう帝釈天参道の写真をご覧に入れました。それから一年の「コロナ禍」で、参道にも境内にもあまり人が来ない状況になってしまいました。参道の店も平日には4時ころには閉店してしまう時期もあったようです。
帝釈天の境内を裏に抜け、江戸川河川敷方向へ数分歩いた突き当りに「山本亭」があります。
山本亭は、写真機材製造で財を成した山本栄之助氏の住居として大正末期に建てられました。関東大震災を機に山本氏がこの地に移転、その後増改築を重ね、書院造と西洋建築の和洋折衷の姿として現在に残っています。詳細は、http://www.katsushika-kanko.com/yamamoto/about/
2003に東京都選定歴史的建造物となり、2018年にはこの建物を含む「葛飾柴又の文化的景観」が重要文化的景観に選ばれています。
玄関から奥の座敷に入り、まず目に飛び込んでくるのは、見事な庭園です。
この座敷の中でも最もいい位置、床の間の前から眺めたときにバランスが取れ一番よく見えるように設計されているとか。しかし座敷の中央に進み、縁側のガラス窓を額縁としてパノラマサイズに広がる庭がいきなり目に飛び込んでくる瞬間が、圧巻です。海外の日本庭園好きには高く評価されているようです(ちなみに一位は島根県にある足立美術館の庭だそうですが、大きさは全く違います)。この庭は実際にはさして広くはありませんが、石組み、滝、池、樹々の配置が変化に富み、奥行きと広がりが感じられます。
当時の資産家が家を作るときは、庭造りと並んで、洋館・洋室に大いに力を入れます。それがステータスのアピールなのでしょう。ただし政府高官だった西郷邸や、三菱の岩崎邸とは違い、建物の主体は「洋館」ではなくあくまで書院造りの和風建築です。「洋」はこの「鳳凰の間」一つだけですが、決して付け足しの扱いではなく、寄木の床、漆喰の天井、ガラス製照明器具や大理石の暖炉、繊細なデザインのステンドグラスの窓など、「和」に引けを取らないしっかりした造作が今に伝えられており、なかなか見ごたえがあります。
それでも僕はやはり「和」をオススメ。僕が訪れた時はまだ寒い季節ではなく、縁側の窓が開放され、滝の水音と鳥の声だけが聞こえる縁側でいただいた抹茶(お菓子とのセット)はこたえられませんでした。食べログにも、載っていますよ。https://tabelog.com/tokyo/A1324/A132403/13034801/
反対側の内庭の「吊りしのぶ」も良い味を出していました。
吊りしのぶとは、シュロの皮などの芯をいわばハンギングポットとし、シダ科の植物しのぶをアレンジしたものを軒に吊るしたもの。涼し気な夏の風物として江戸時代から昭和の初めごろに流行したようです。
欄間の造形もなかなか洒落たデザインでした。
山本亭のすぐ隣が、寅さん記念館、山田洋次ミュージアム、そして矢切の渡しのある江戸川河川敷です。帝釈天からの道すがら、敷地内を通りぬけることができますので、せっかくですから休憩がてら、ぜひ山本亭の内部もご覧になればいいと思います。
地図は葛飾区のHPからお借りしました。