前回は「目黒富士」の話を掲載したので、目黒つながり、建築つながりで、ホテル雅叙園東京の「百段階段」を紹介しておきましょう。
1935年(昭和10年)から宴会場として建てられ、戦災や戦後の接収を生き抜いて今に残る建築物です。
この階段、実は一直線ではなくわずかに左右にぶれていますし、一階分ごとに宴会場に通じる踊り場があるので、写真よりは急峻に見えない感じですが、それでも下に立って見上げるとテッペンは遥か彼方。なかなか迫力があります。この高低差は20メートル近くはあるはずで、雅叙園が、目黒川が削った崖地を敷地としているからです。
その階段の踏み板は厚さ5センチにも及ぶ欅材。秋田杉だというその天井画にはじまり、各階広間(宴会場7室)の内部装飾が実に見事で、天井・欄間・長押・床の間・襖・障子に至るまで、優れた手技による「美の大規模集積回路」とでもいうべきものになっているのです。
一年のうち多くの季節で、階段や宴会場を「飾って」イベントを開催。観光客を集めていますが、私が行った時はシンプルな見学コースのみで、それもよかったと思いました。
わずかな光に浮かび上がる天井画。欄間や床の間の過剰とも思える装飾。高度な技法で美しい形を描く建具。
これは最上階、「頂上の間」として開放感MAXのお部屋。
雅叙園の建物がアニメ「千と千尋の神隠し」のモデルなら、さしずめここは「湯婆婆(ゆばーば)の居室にあたるかもしれません。緑と光に囲まれた豊かな空間です。
一見の価値、あり、です。
各部屋の特徴や美術品なと詳しくはこちらを。
文化財「百段階段」の歴史と各部屋の紹介|東京都指定有形文化財「百段階段」 – ホテル雅叙園東京
伝統的な美意識の最高到達点を示すものといわれるホテル雅叙園東京にある文化財「百段階段」